syumishi-researcherの日記

『趣味誌』『地方誌』『同人雑誌』など出版史に於ける「自主出版雑誌」の歴史を調査・研究・記録しています

執筆者は串間努です。 『趣味誌』『地方誌』について研究しています。  また、趣味誌・地方誌について調査すると、周縁の雑誌も必要でした。  例えば明治期から戦前だと、「文芸投稿雑誌」「青年言論政論雑誌」「校友会雑誌」「綴り方雑誌」「青年団團報」(銃後後援会雑誌)「土俗・民俗、郷土研究雑誌」「懸賞情報雑誌」「田園文学雑誌」「園芸雑誌」「宗教教化雑誌」「修養・国家主義雑誌」も要研究であるし、戦後であれば族生した「仲介+副業+広告+蒐集+文芸誌」「標語誌」「歌謡投稿誌」のほか「弁論雑誌」「人生雑誌」「職域サークル誌」「療養所の文芸誌」が重要です。 これまで溜めた山盛りの資料がありますが、このままゴミ屋敷に埋もれたまま前期高齢者の筆者がいなくなると、もったいないこともあり、判ったことを発表していきます。 筆者は中学生時代に趣味誌を知り、高校のときは自分でも発行して、当時の趣味誌の世界は知っております。昭和50年代以前のことは体感していませんが、古書店や趣味人から買い求めた戦前の趣味誌や地方誌を読み進んで、三十年目にしてようやく「全体構造」が理解できました。 これまで明治文学史や戦後の雑誌を研究していた、研究者の方の労作も読みましたが、全体の流れではなく一つの分野だけを視ているため、「明治期で青年たちの地方誌は終わっていないのに…」とか、「そうではなくて…その人物は後年に蒐集趣味の世界に行くのに…」と、「隔靴掻痒」の念があります。 また、戦前の『趣味家』や周辺にいる人物は、宮武外骨、齋藤昌三、三田平凡寺ら著名人ばかりが、取り上げられています。磯ヶ谷紫紅・鎮目桃泉・伊藤喜久男・鷲見東一らを取り上げた成書が無いことを残念に思っております。 乱暴に簡単にいうと、『中学文壇』『文章世界』など商業雑誌の文芸投稿雑誌に感化された青少年らが「おれもやりたい」と、「雑誌ごっこ」「文士ごっこ」をして、「投稿主体」の自主発行の雑誌を作り、現代でいう「承認欲求」から雅号を付けて呼び合っている。「東京の中央文壇なにするものぞ!」と各地方で出され、それが『地方誌』になっていったと。 趣味誌のほうは、ルーツは明治時代に古銭の世界で小集団が作られ、古銭の形を拓本のように擦ったものをまとめた冊子が発行されたこと、もう一つ、「掃苔」と呼ばれるお墓詣りの趣味の人は徳川幕府を回顧する「江戸レトロ」マニアでもあるのですが、マッチを集めたり、土俗という民俗学の草分けのようなことにも興味があって、それらを共通に媒介した人物がいたりしました。 戦前~明治期の紙媒体の趣味誌や文芸投稿雑誌などを見ると、現代と同じようにマニア・オタクの領域と共通する者たちです。 中には「自分は他人とは異なる存在だ」「自分の感性は同級生には理解してもらえん」など、『中二病』的な少年もいます。 ネットの世界と相似形に、お互いに交流したり、男子学生が女子の雑誌にやってきたり、盗作を告発する「剽窃警察」がいたりと、明治も令和も青少年の行動はだいたい同じなのでした。
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